2014年11月13日
国際環境NGO FoE Japan

《抗議声明》 原発メーカーを免責し、原発輸出を促進する
「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)の衆議院での採択に抗議

本日、「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)が衆議院で承認されました。

FoE Japanは、かねてより、同条約が福島原発事故の教訓を踏まえないまま、原発輸出を促進するものとして、反対してきました。同条約には、具体的には、以下の問題点があるからです。

1.原発メーカーの賠償責任を免責されること。結果として、原発輸出が促進されること。
 
2.一定額以上の原子力損害賠償を国際的に支援する枠組みであること。これによって、事故を起こした原子力事業者に利すること

3.「1.」「2.」の結果として、原子力ビジネスに携わる主体が、利益のみを得てリスクをとらずにすみ、モラルハザードが引き起こされ、原発輸出が加速されること

4.原子力損害賠償の項目に一定の制限がかけられ、多岐にわたる原子力損害賠償が支払われない可能性があること

5. 日本の原子力損害賠償法で採用されている「無限責任」(いかなる額になろうとも原子力事業者は賠償を支払わねばならない)原則が採用されておらず、損害賠償額に一定の上限が設けられる可能性があること

6. 原発事故が国境を越えて広がるのにもかかわらず、裁判管轄権が事故発生国に集中されるため、原発事故を起こした当該国でしか裁判を行えないこと

7. 「4~6」の結果として、原子力事故の被害者が保護されないこと

これらの問題点が置き去りになり、拙速に審議され、承認されたことに、強く抗議します。

東京電力福島第一原発事故においては、原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)による責任集中原則により、東電が一義的な賠償義務を負っていたのですが、実際は、「原子力損害賠償支援機構」という仕組みにより、そのツケは、消費者や納税者が負うことになってしまいました。

これを国際的にやろうというのがこの条約です。

なぜ、原発メーカーだけが、このように手厚く保護されるのでしょうか?
なぜ、そこまでして原発輸出を促進するのでしょうか?

そこまで保護しないと原発ビジネスが成り立たない、すなわち、原発はそれだけ危険で、非効率な発電システムであるからです。

多くの人たちが故郷を失い、いまだに収束のめどがたたない福島第一原発事故。
日本が輸出するべきなのは、この反省に学び、持続可能なエネルギー構造を実現させるための知恵や仕組みや哲学ではないのでしょうか。

条約の承認に関しては衆議院が参議院に優越することが定められているため、事実上、本条約の承認は決まってしまう見込みです。

FoE Japanは引き続き本条約の問題について訴えるとともに、現在指摘されている本条約の問題について、参議院の審議において徹底審議されるよう国会議員に呼びかけていきます。

問い合わせ先:国際環境NGO FoE Japan 担当:満田(090-6142-1807)
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9 Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986



参考)
CSC条約の条文はこちら(PDF、外務省のページにリンク)
CSC条約概念図

CSC概念図


(出典:外務省ウェブサイト)

みなさま(重複失礼・拡散歓迎)

FoE Japanの満田です。連投失礼しまします。

さきほど、鹿児島県議会で、再稼働を求める陳情(1件)が採択され、再稼働反対もしくは地元同意拡大などを求める陳情・請願(計31件)を否決しました。

(特別委の報告をお送りした先のメールで、数を間違えてしまいましたが、再稼働反対陳情・請願の数は31件だったそうです。お詫びして訂正いたします)

私は傍聴することはできず、インターネットで見ていました。あっという間でした。

反対討論に立ったのは、(私がみれた範囲では)柳誠子議員(県民連合)、松崎真琴議員(共産党)、下鶴隆央議員(無所属)です。柳誠子議員も松崎真琴議員も、大飯原発の福井地裁判決を引き合いにだして切々と訴えており、本当に感動的でした。

柳誠子議員は、 解決不可能な核のゴミについて、日本学術会議の提言を紹介しながら、将来にツケを残す無責任さを指摘した上で、以下のように述べました。
福島原発事故がまったく反映されていない。福島の浪江、大熊、双葉町、いわき市の仮設住宅へ。誰も住めない地域がここまで広大なのか。30km圏内当然同意を求められてしかるべき。
さらに、
電気は足りている。今夏はむしろ余裕すらあった。燃料費が増大したとするか過大評価。いずれにしろ、福井地裁の判決のように、燃料費の多寡を、生存の権利を優先させて論じるべきではない。 
と述べ、以下のように締めくくりました。

九電は太陽光の買取を留保。解決可能な課題。多くの企業が、再生可能エネルギーの技術開発にしのぎをけずっている。原発にそそぐ経費を、再生可能エネルギーにふりむけるべき。
原発に依存しないエネルギー政策へ舵を切れば、決断をするのが責任。福島原発事故の悲劇をくりかえすな。



松崎真琴議員のスピーチには心打たれました。

審査がまだ終わっていないこと、火山、避難計画、地元同意、地域活性化などについて、一つ一つの陳情のポイントに触れながら、述べていきました。

火山については、以下のように火山学会の提言を紹介。
火山学会は、巨大噴火は予知困難としている。川内原発の火山噴火を予知できるというのは「科学のねじまげ」とも指摘している。
それに対して、原子力規制委員会の田中俊一委員長は、「(燃料の運びだしについて)いざとなったらプールに沈める。石棺という手もある」とまで発言した。

(ちなみに、田中俊一委員長は、燃料が3カ月で運びだし可能というような趣旨の発言をしていましたが、同じ田中委員長は、以前は燃料の冷却に5年くらいはかかると認めていました。)

最後にこういって締めくくりました。
 
討論を終わる前に同僚議員に訴えたい。
私たちがすべきことは、県民のいのちと安全を守ること。
福島の現実を直視しよう。結局、原発をうごかしたいのは原発利権に群がる人たちのみ。
 
私たち地方議員は地元住民の付託を受け、県議会に臨んでいる。
福井地裁の判決の述べているとおり、豊かな自然とそこに住み続ける住民が国富。これが失われることが国富の流出。美しい鹿児島を守り、そこに暮らす人々を守ろう。

再稼働に断固として反対します。

しばらく拍手が鳴りやみませんでした。

下鶴議員は、しばらくは原発に頼ることもやむをえないが、川内原発を今再稼働することは県民のためにならないとし、以下の点を述べました。
県として、国に、事故があったときの全額・迅速の賠償を求めるべき。知事は、「国が関係法令に基づき対処する」という大臣の発言でよしとしているが、そんなのは当たり前の事。なぜ「関連法令」? 原賠法では、「国が必要な場合は」支援をすることになっている。
 
このまま無条件に再稼働に同意することは10年後、20年後に大きな禍根を残す。公平なリスク負担を他県に、国民全体に問いかけるべき。他県の人が、「安い電気をつかえるから賛成」というのはフェアではない。たとえ再稼働に同意するとしても、あと10年後には、止めることを条件にすべき

自民党・公明党は、賛成の討論にすら立ちませんでした。

そして採決。賛成陳情が起立多数で採択。傍聴席から激しい抗議の声。反対陳情・請願が次々に不採択。

陳情にこめられた人々の想いが次々に踏みにじられて行くようで胸痛くなるような情景でした。

そのあと、自民党から、国に対して、原発に関する住民の理解を得るための対応や、避難計画の充実への支援などを求める意見書が提出されました。

松崎議員のみが

「国への注文がならんでいるが、原発を止めてほしいという人々の想いを踏みにじっておきながら、そのあとに人々の理解を得ることを国に求めるなど本末転倒」

として、反対しましたが、採決されました。

最後に伊藤知事が閉会のあいさつ。

傍聴席からは「再稼働反対」のコールで、伊藤知事の声はかき消されていましたが、以下のようなものでした。

近々、私の意見も決める。県民のみなさまのますますのご挨拶とご健勝をお祈りして、閉会としてます

いや、ホントに、いっそ潔いほどの民意の無視っぷりでした。

傍聴して感じたのは、公開の場で徹底的な議論をしない風潮、数の論理でものごとを決めていく、動かぬ「壁」の存在です。これまで日本の地方政治を動かしてきた、理屈じゃないんだものごとはという風潮。論理的に考えれば、自民党議員だって、なんで今再稼働判断なの?ポーズだけでももっと慎重にやったほうがい
いんじゃない?と思った議員もいたはずです。

残念ながら、いちき串木野市選出の自民議員も含めて、造反議員はでませんでした。

FoE Japanでは以下の抗議声明を出しました。拡散していただければ幸いです。

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【緊急声明】川内原発再稼働、多くの疑問残す鹿児島県の「地元同意」
31件の反対陳情・請願に込められた人々の想い無視
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さきほど、鹿児島県議会が、再稼働同意を決めました。

「再稼働反対」の31件もの陳情、その中には再稼働反対のみならず地元同意の拡大、慎重な検討・調査を求めるものも含まれていましたが、あっという間に否決されました。

会場は抗議の声につつまれました。再稼働反対の議員たちの反対討論は、本当に心をうつものでした。(のちほどもう少し詳しい報告をお送りします)

自民党・公明党は討論すら行おうとはしませんでした。

しかし、もちろんこれで終わりではありません。川内原発をめぐっては、多くの疑問の声があがっています。伊藤県知事が、同意を急いだのも、これ以上反対の声が大きくなるのを恐れたからではないでしょうか?

FoE Japanは以下の緊急声明を発出しました。ぜひ、拡散してください。


2014年11月7日
国際環境NGO FoE Japan

【緊急声明】
川内原発再稼働、多くの疑問残す鹿児島県の「地元同意」
31件の反対陳情・請願に込められた人々の想い無視

本日、川内原発再稼働をめぐり、鹿児島県議会は、31件の再稼働反対(または慎重、もしくは更なる調査をやるべき、地元同意を広げるべきなど)の陳情・請願を否決、1件の再稼働賛成陳情を可決しました。近日中に伊藤知事も再稼働に賛成するとみられます。

昨日の原子力安全対策等特別委員会で、再稼働反対の県議会議員は、県民の理解が得られているとは到底言えないこと、保安規定や工事計画認可の審査はまだ終わっていないこと、責任の所在が不明確であること、福島原発事故はなお収束せず、多くの人たちが幸せな生活を奪われて苦しんでいること、原子力規制委員会はまだ保安規定・工事計画認可の審査中であること、火山学会は「巨大噴火は予知困難」とし原子力規制委の火山影響評価ガイドを見直すべきとしていること、「国富」とは美しい鹿児島で人々が幸せな生活を営むことであること、原発立地の地域活性化は原発に頼らない方向でいますぐ取り組むべきことなどを切々と訴えましたが、自民党・公明党などの数の論理で押し切られた形となりました。

県内5箇所で開催された審査書に関する説明会では反対の意見が相次ぎました。今回の「地元同意」は到底民意を反映したものとは言えません。

川内原発を動かしてはならない理由はたくさんあります。逆に川内原発を今、急いで再稼働させなければならない理由は見当たりません。これは、多くの議員が指摘したところです。

住民のいのちと安全を守る最後の砦たる避難計画は、欠陥だらけであり、さらに一時避難所や避難集合場所が、ハザードマップ上の危険エリアにあり、これは災害対策基本法施行令に違反している恐れがあります。市民団体の問合せに対して、薩摩川内市、出水市、阿久根市、いちき串木野市、また受け入れ先の出水市もこのことを認めざるをえませんでした。

鹿児島県知事・県議会はなぜ、これほどまでの多くの問題を無視して、地元同意を急いだのでしょうか? 

今回、不採択となった再稼働反対、あるいは地元同意拡大などの39件もの陳情・請願に込められた一つ一つの県民の想いが踏みにじられたこと、またこれが、今後の原発の再稼働における「民意なき地元同意」の前例となったことは残念でなりません。


問い合わせ先:国際環境NGO FoE Japan
〒173-0037 東京都板橋区小茂根1-21-9
Tel:03-6909-5983 Fax:03-6909-5986  携帯:090-6142-1807(満田)


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