9月10日に、川内原発の審査書が原子力規制委員会で確定。同日、施設の設置変更許可が承認。
その2日後の9月12日に、「待ってました!」とばかりに、内閣府の「原子力防災会議」が開催され、安倍総理は、ここで、川内原発の避難計画が、「具体的かつ合理的になっている」ことを了承・確認しました。

同日の原子力防災会議の資料や、関係資料から、川内原発をめぐる避難計画は、実効性がないばかりか、住民の被曝を前提とし、避難できない要援護者を見捨てる、まさに「非人間的」な内容であることがあきらかになってきました。いったい何をもって、「具体的かつ合理的」と判断したのでしょうか?

以下、特に見過ごせないと思った点を図を用いて解説します。

1.在宅の要援護者で、避難できない人は屋内退避(=体のよい「見捨て」)。退避場所、原発至近。津波ハザードマップ上は赤!

PAZ(5km圏内)の在宅の要援護者のうち、避難できない人は、PAZ5か所にある一時退避所に避難することになっています。
しかし、いずれも原発からすぐ近く。一番近いのは旧滄浪小学校で、原発から1.6kmのところです!
津波ハザードマップ上、津波リスクが高い場所です!

川内原発_要援護者の屋内退避

(出典:原子力防災会議資料をもとに、薩摩川内市のハザードマップ上の情報を確認。)

津波ハザードマップ_GP

出典:グリーンピース・ジャパン2014年6月30日発表資料)

2.避難できない在宅要援護者は「屋内退避所」に。2日間で、100mSv以上被曝も。

原子力規制委員会は、コンクリートの建物に屋内退避したときの被曝量のシミュレーションを行っています。しかしこの前提は、たいへん問題の多いもので、下記のようになっています。
セシウム137が100テラベクレル
炉停止から放出開始までの時間:12時間
環境中への放出継続時間:5時間(一定の割合で放出されると仮定。)

東京電力福島第一原発の事故では、東京電力の試算(2012年5月24日発表)でさえ、セシウム137は10ペタベクレル(1万テラベクレル)放出しています。上記の試算はその100分の1です。
そして、環境中への放出継続時間5時間というのも、極めて楽観的な仮定に思えます。

現在、PAZ(5km圏内)の避難できない在宅要援護者は、屋内退避ということになっています。
原子力規制委員会の大甘の前提でさえ、下記のようにたった2日間で、100mSvを軽く上回る被曝を強いられることになるのです。避難が難しいから、大量被ばく覚悟で屋内退避…。
そんなことを前提に、原発の再稼働をするのでしょうか?

だからって屋内退避?

(出典:原子力規制委員会「緊急時の被ばく線量および防護措置の効果の試算について)

3.被曝前提の計画。5km圏外は「高線量になるまで、逃げるな!?」
…vs 福島原発事故時には、翌日夕方20km圏内に避難指示

これは川内原発に限らず、なのですが、5km圏内は、原子炉の状況に応じ、避難を指示がだされます(冷却機能の喪失などの状況になると避難指示がでます)。
しかし、5km圏外は、じっと屋内退避をして、待つことになります。
5km圏外の避難基準は、毎時500μSvで即時避難(ありえない高い値です)、毎時20μSv超で、「1週間以内に一時移転」となっています(ちなみに、放射線管理区域の値は、毎時換算にすると0.6μSvです)。

毎時20マイクロシーベルト超えで、「1週間程度内に一時移転」

(第4回原子力防災会議資料を加工)

4.10キロ圏外の要援護者の施設の避難先は、そのとき決める。「コンピュータシステム」で調整

あいかわらず、10キロ圏外の要援護者の施設(社会福祉施設、病院など)の避難先は決められておらず、避難計画もたてられていません。

避難先は、事故がおきたときに決める。避難先が入力されている「コンピュータシステム」で調整することになっています。「コンピュータシステム」といっても、1~5年に1度実施するアンケートをもとに、空ベッドの状況が検索できるようになっているというもので、これからシステムをつくるということのようです。

10キロ圏外の要援護者施設は

空ベッド検索システム_西日本新聞140826

東京新聞20140823


5.集合場所は水没、避難経路も水没。避難先は風下。

集合場所、避難経路をハザードマップと重ねてみると赤い地域となります。「複数経路用意した」と内閣府はいいますが…。さらに、避難先は風下の確率大!

集合場所水没_避難先川下!


避難経路の水没(寄田)


6.避難先は一人2平方メートル。 在宅の要援護者もここに避難!

避難先としては、体育館や公民館などが割り当てられていますが、一人当たりのスペースは共有スペースも込みで、一人当たり2平方メートルです。なかには、駐車スペースが、2台分くらいしかない避難所も。
在宅の要援護者も、基本的にはここに避難することになっています。

避難できない避難所

(出典:西日本新聞「避難できない避難所? 1人分の広さ1.2畳」(2014年6月1日付)

7.スクリーニング(検査)・除染は、避難先!?

避難者や車両について放射性物質を拡散させないため、検査(スクリーニング)や除染を行うことになっていますが、これはいままでは30kmを越えた沿道の適切な場所ということになっていました。これは、もともと自治体にとって頭の痛い話でした。適切な場所の確保は難しく、さりとて、スクリーニングをしなければ、放射性物質が拡散してしまいます。

自治体への聴き取り調査では、スクリーニングの場所を確保しているのは、日置市の1箇所にとどまりました。

9月12日の原子力防災会議の資料3-2、75頁は下記のようになっています。

スクリーニング


「避難退域時検査・除染については、原則として避難先となる市町に一ヵ所ずつ設置する救護所等で実施。」と書いてあります。「救護所」とは何か不明ですが、「救護所」が避難先を意味しているとすれば、それは放射性物質の避難先への持ち込みを許すことを意味しています。

「スクリーニング・除染」が困難だからといって、新しい言葉をつくってごまかしているとしか思えません。

その他、川内原発の問題は、以下のように列挙できます。

  1. 30km圏の外に出れば安全という設計
  2. 風下への避難
  3. 避難経路…複合災害を想定していない
  4. 要援護者の避難計画…10km以遠はたてられていない
  5. 避難時間シミュレーション
  6. 二段階避難は非現実的
  7. 長期にわたる避難に対応していない ~避難先は一人2平方メートル
  8. スクリーニングおよび除染の場所が決まっていない
  9. 住民の意見の反映
  10. 地元同意~リスクは負うが意見は言えない
くわしくは、こちらのパンフレットをご覧ください。

http://goo.gl/EWRDmq

(満田夏花/FoE Japan)