本日の午前中に行われた参議院の本会議で「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)への加盟が承認されました。
これにより、原発事故が起こっても原発メーカーの責任は問われず、原発事故の損害賠償が一定額以上になれば、国際的な枠組みで補完され、原発事業者にとってもおいしいCSCの発効に日本が加担することになりました。

安倍政権の勝手な衆院解散にあわせて、日程を前倒しにして、審議を急いだふしもあります。

またもや、国会はその機能を果たすことができませんでした。
残念です。
自民・公明・民主・維新・次世代・新党改革が賛成
みんな・共産・社民・生活・無所属の議員たちが反対
でした。

FoE Japanは下記の抗議声明を発出しました。
この無念さをかみ締めて、選挙に臨みましょう。
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《声明》 
原発輸出を促進し、原子力ビジネスを手厚く保護する
「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)の
あまりに拙速な国会承認に抗議

本日、「原子力損害の補完的補償に関する条約」(CSC)への加盟が参議院で承認されました。

安倍政権による衆議院解散の日程に合わせて、多くの問題を議論せぬまま、日程を前倒しにして進められた本日の採決に、強く抗議します。

本条約は、福島原発事故の教訓を踏まえないまま、原発輸出を促進するものです。
具体的には、以下の問題点が挙げられます。

  1. 原発メーカーの賠償責任を免責されること。結果として、原発輸出が促進されること。
  2. 一定額以上の原子力損害賠償を国際的に支援する枠組みであること。これによって、事故を起こした原子力事業者に利すること
  3. 「1.」「2.」の結果として、原子力ビジネスに携わる主体が、利益のみを得てリスクをとらずにすみ、モラルハザードが引き起こされ、原発輸出が加速されること
  4. 原子力損害賠償の項目に一定の制限がかけられ、多岐にわたる原子力損害賠償が支払われない可能性があること
  5. 日本の原子力損害賠償法で採用されている「無限責任」(いかなる額になろうとも原子力事業者は賠償を支払わねばならない)原則が採用されておらず、損害賠償額に一定の上限が設けられる可能性があること
  6. 原発事故が国境を越えて広がるのにもかかわらず、裁判管轄権が事故発生国に集中されるため、原発事故を起こした当該国でしか裁判を行えないこと
  7. 「4~6」の結果として、原子力事故の被害者が保護されないこと

東京電力福島第一原発事故においては、原賠法(原子力損害の賠償に関する法律)による責任集中原則により、東電が一義的な賠償義務を負っていたのですが、実際は、「原子力損害賠償支援機構」という仕組みにより、そのツケは、消費者や納税者が負うことになってしまいました。

このような「無責任」体制を国際的に広めるのがこの条約です。

原発はそれだけ危険で、非効率な発電システムであり、公的な手厚い保護なしには成り立たないのです。

この国会での拙速な審議も、国会が国際的な「原子力村」の便宜を図っているとしか見えません。

いまだに収束のめどがたたない福島第一原発事故。多くの人たちが故郷を失いました。
日本が輸出するべきなのは、この反省に学び、持続可能なエネルギー構造を実現させるための知恵や仕組みや哲学ではないのでしょうか。

FoE Japanは引き続き、多くのみなさまとともに、福島原発事故の教訓を踏まえ、原発輸出に反対していきます。

問い合わせ先:国際環境NGO FoE Japan 担当:満田(090-6142-1807)
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