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東京電力福島第一原発事故後、放射線量が局地的に高い「特定避難勧奨地点」に指定されている福島県南相馬市の152世帯。
政府は10月末にも解除の方向を打ち出しました。しかし、これに対しては全住民が反対しています。
10月10日、6人の住民が経済産業省・内閣府に対して、「住民の意向を無視しての解除に反対」「土壌汚染はまだ強く、高濃度の放射性物質を含む物質が点在している」「解除は見直すべき」という要請書を提出しました。
政府は10月末にも解除の方向を打ち出しました。しかし、これに対しては全住民が反対しています。
10月10日、6人の住民が経済産業省・内閣府に対して、「住民の意向を無視しての解除に反対」「土壌汚染はまだ強く、高濃度の放射性物質を含む物質が点在している」「解除は見直すべき」という要請書を提出しました。
現役の行政区長や前区長、子どもや孫を心配する女性などが含まれています。
その後、開かれた集会には、支援者など100人が参加し、「全国で連携して、国の無謀な指定解除に反対していこう」と確認しました。
住民は、「南相馬・避難地域の会」のメンバー。集会は、同会が主催、「福島老朽原発を考える会」「国際環境NGO FoE Japan」「避難・支援ネットかながわ(Hsink)」「ひまわりプロジェクト南相馬」が共催しました。
行政区長の藤原保正さんは、「住民はみんな反対している。なぜ加害者(である国)が一方的に基準を決めるのか」と憤りました。
前区長の末永さんは、「解除基準があまりに高い。これは南相馬だけの話ではない」と指摘。
現地で測定活動を進めてきた住民の小澤洋一さんは、「放射線管理区域よりはるかに高い汚染が広がっている。そこに帰れというのか」と強調しました。
小学生の子どもを持つ母親は、「私は子どもを守らなければなりません。解除に反対します」と述べました。
政府との会合で問題となったのが、解除基準である年20ミリシーベルト、毎時3.8マイクロシーベルトが、あまりに高すぎるという点です。
政府はICRPをよく引き合いにだしますが、ICRPの勧告では、事故後の混乱が収まったのちは、1~20ミリシーベルトの下方に"参照値"をとり、ここに向かって下げていくのと同時に、参照値自体も1ミリシーベルトに向けて下げていくことになっています。
訓練された職業人以外の立ち入りを禁止している放射線管理区域は、毎時換算で0.6マイクロシーベルト。それよりもはるかに高い値を解除基準に用いているのです。
福島老朽原発を考える会の阪上武さんは、「少なくとも1mSvまで下がってはじめて帰還の話を持ち出すべき」とします。
埼玉県から参加した放射線管理区域管理者の資格を持つ桑原さんは、「放射線管理区域では、10時間以上はすごしてはいけない。そこに3年半も住民を生活させ、さらに避難させている人も賠償を打ち切って、強制的に帰還させるとは何事か」と語気を強めました。
住民たちは今後、署名運動などを行って、特定避難勧奨の解除に反対する住民意見を表したいとしています。
以下は住民たちが提出した要請書です。
内閣総理大臣 安倍晋三 様経済産業大臣 小渕優子 様南相馬市…特定避難勧奨地点の解除に反対汚染の実情と住民の意向に即した避難勧奨の継続と地域指定を私たちは南相馬の住民です。福島第1原発事故に伴い、私たちのふるさとは汚染され、いまもなお強い汚染が継続しています。2011年、政府が一方的に決めた年20ミリシーベルトという高い基準と、そこから導き出された空間線量率に基づき、住民の意向を無視して、世帯ごとに特定避難勧奨地点が定められました。調査もいいかげんで、同じ汚染レベルでも、指定されたりされなかったりでした。これにより、汚染が高く、避難したくても避難できない多くの住民が指定から漏れました。そして、今度は、特定避難勧奨地点に指定された南相馬市内の152世帯について、政府は早ければ10月中にも指定を解除することを伝えてきました。10月8日に開催された説明会で、発言した住民のすべては反対意見でした。それもそのはずです。除染が済んだといわれる南相馬市の環境には、いまだに百万Bq/kgを超える黒い物質といわれるものがあり、数十万Bq/m2もの汚染地帯があるのです。そんな場所に帰還を強要するのでしょうか。そんな場所に子どもや孫をすまわせろというのでしょうか。住民の意見は、またしても無視されてしまうのでしょうか。私たちは、特定避難勧奨地点の解除に反対し、住民の意向と汚染実態に即した避難勧奨の継続と地域指定を求めます。2014年10月10日南相馬・避難勧奨地域の会
(満田夏花/FoE Japan)